所有者不明の土地とはどういうことでしょうか? 不動産登記上は不明の土地はないはずです。相続税の申告書は相続開始から10カ月以内にしなければなりませんが、相続登記の期限は定められていません。

 そのため、相続税の申告が必要でない場合や、相続人の間で争いが生じた場合、また寄付をしたくても受け付けてもらえない場合……こうしたケースから、所有者不明のままになっていることが多いと考えられます。

 預貯金にしても、被相続人の健康状態が徐々に悪化し、痴呆になることもあり得るでしょう。また、相続人が多い場合、亡くなった方があれば代襲相続も出てきます。そうなると、遺産分割協議書の同意はますます難しくなってきます。その結果、引き出せないまま滞留した預金は死蔵預金となってしまいます。

 不動産は固定資産税評価額に基づき、市町村役場から固定資産税の納付書が送られてきます。未分割でも共有として、代表者に納税通知書が送られます。相続人の一人が判断能力を失うと、裁判所を通して青年後見人を選任してもらわなければ、遺産分割協議ができなくなります。そして、その申し立てには数カ月の時間と費用がかかります。

 長期間相続登記を放置していると、種々の問題が発生し、いざ登記をしようとなった時、余分の時間と費用がかかってきます。さらに、相続登記ができない危険性も出てきます。

 

■相続登記をしないままでいると……

①役所で亡くなった方の住民票や除籍謄本等相続登記に必要な書類が取れなくなる。

②相続人のうち誰かが亡くなると権利関係が複雑になる。

③相続人の高齢化で遺産分割協議書が行い難くなる。

 

 以上のことから、相続財産は次の世代にきちんと引き継ぎ、役立つようにすることが大切だと思います。
 相続人となる子供たちには、思いやりと常識を身につけ、社会人として責任をもって行動できる人間に育ってほしいものです。相続人それぞれが自立し、親の財産を当てにしなくても生活していけるようになることで、争うこともなく、冷静にものごとを判断できる人になれるのではないでしょうか。

 「子は親の後ろ姿を見て育つ」と言われます。自分の意思をしっかりと伝えたいなら、遺言書の作成をお勧めします。相続時には、遺産分割協議書を作ることなくスムーズに相続登記等が行われ、もめることもありません。

月刊新松戸10月号掲載